So-net無料ブログ作成
検索選択

『ギルガメシュ叙事詩』(月本昭男)

“世界最古の神話”とも言われるギルガメシュ叙事詩。
原典の欠損部分も明示した全訳に加えて、学術的研究成果の概要も解説されている“決定版”です。

世界の神話や超古代史に興味のない人なら、ギルガメシュという名前すら聞いたことがないかもしれません。
本書の解説によれば、どうやら紀元前2600年頃に実在した王だったようです。
現在のイラクにあたるメソポタミア地方にあったシュメール人たちの都市国家群の中でも特に有力だった都市ウルクの王。
死後に神格化された後に成立したのがシュメール語による最古の伝承ですが、ごく断片的にしか見つかっていません。
シュメール人の都市国家が衰退した前2000年頃より後、メソポタミア地方は様々な民族が入れ替わり立ち替わり支配していたようですが、その頃に成立したのが主にアッカド語による諸版。
その中でも前12世紀頃に確立した版がその後も広く伝承されたらしく、「標準版」と呼ばれています。
近代社会がギルガメシュ叙事詩を再発見したのも、この標準版によってです。
1872年に初めて発見されたのは、アッシリア王アッシュルバニパルが前7世紀に建てた図書館に納められていた12群の粘土板だったそうです。(ただし、第12書板は前700年頃に付け加えられた部分らしい。)
本書では、標準版だけでなく、アッカド語の古バビロニア版(前2000年頃~前1500年頃)・中期バビロニア版(前1500年頃~前1000年頃)や、ヒッタイト語版やフリ語の断片も、収録されています。

さて、標準版の第11書板までに従って、ギルガメシュ叙事詩のあらすじを紹介しましょう。
1)エンキドゥとの出会い:
 ギルガメシュの暴虐を訴えられた天空神アヌは、ギルガメシュに似せた野人エンキドゥを創造する。
 エンキドゥは、娼婦シャムハトとの交わりを通じて人間らしくなる。
 ギルガメシュとエンキドゥは格闘するが、決着が付かず親友となる。
2)香柏の森への遠征
 ギルガメシュとエンキドゥは香柏の森に住む怪物フンババを退治し、香柏を伐採して持ち帰る。
3)イシュタルと天牛
 女神イシュタルがギルガメシュに言い寄るが断られる。
 復讐のために送られた天牛が地上を暴れ回るが、ギルガメシュとエンキドゥが退治する。
4)エンキドゥとの死別
 天牛を殺したため、エンキドゥが亡くなる。
5)不死の探求
 死を恐れるようになったギルガメシュは、不死を求めて旅に出る。
 「死の水」を渡った先で、最初の人間ウトナピシュティムに出会う。
 ウトナピシュティムは、方舟によって大洪水を生き延びて神となった経緯を話す。
 ギルガメシュは「若返りの草」を手に入れるが、帰り道で蛇に盗まれてしまう。

解説では、叙事詩の内容に関する主な議論も紹介されています。
まず、4つの主題として、不死の探求・友情・太陽神信仰・精神遍歴。
また、洪水神話を中心とする旧約聖書との関連や、冥界神としてのギルガメシュへの古代信仰も。

今回の読書で改めて参考になったのは、以下の点です。
・諸版の詳しい成立史
・諸版の多くが、「作者」を想定しうる文学作品だと見なせそうなこと。
・標準版の全体構成:上記の3を挟んで(1+2)と(4+5)がきれいに対応すること


ギルガメシュ叙事詩

ギルガメシュ叙事詩

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1996/02
  • メディア: 単行本





余談ですが、初めてギルガメシュ叙事詩のことを知ったのは、『世界最古の物語』(現代教養文庫)(絶版)によってでした。
古バビロニア・ヒッタイト・古ユダヤの神話が、読みやすい文章で紹介されています。
12歳の頃に読んだのですが、その後の興味の広がり(神話学・民俗学・・・)に大いに影響した1冊です。

世界最古の物語―バビロニア・ハッティ・カナアン (1973年) (現代教養文庫)

世界最古の物語―バビロニア・ハッティ・カナアン (1973年) (現代教養文庫)

  • 作者: T.H.ガスター
  • 出版社/メーカー: 社会思想社
  • 発売日: 1973
  • メディア: 文庫



2010-03-09 10:27  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0)  共通テーマ: [最近読んだ本]

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この記事のトラックバックURL:
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。