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新人賞の審査を若手作家がやること

新潮新人賞の審査員に、川上未映子さんが就任されたそうです。
新人賞の審査を若手作家がやることについての批判もあるようなので、ちょっと考えてみました。

川上未映子さんだったら良い人選だ、というのが素直な感想です。
思考と言語化において圧倒的な才能を感じる方だからです。
おそらく、作品に内蔵されるものの大きさについて、的確な判断ができるのではないでしょうか。

一方、まだ小説家としての実績の少ない若手作家が新人賞を審査することへの批判があるのも当然でしょう。
いわく、
「未熟な人に、他者の命運を決する権利があるとは、さすがに思わない。彼らが、自分の立場を脅かしかねない人々を、推すとは、想像しにくいからだ。」
「金銭的、名声的には、魅力的な話なのだが、公募に応じてくるアマチュアの才能に、うっかり嫉妬してしまうくらいなら、自分の小説を磨きたいと思うもの。」
一般論としては一理あるかもしれません。

しかし、川上未映子さんに関しては、後進に脅かされることなど恐れもせず、小説を磨くというよりは小説によって磨かれようという生き方をしている、といった印象なので、こういった批判に当たらない、と思います。

さて、上にあげた批判の言葉を書いた作家は、川上未映子さんへの人格攻撃のような批判も書いています。
つまり、昔はこんなことも知らなかった、自分が教えてあげたことを昔から知っていたことのように自慢している、等々。
川上未映子さんによる合理的な反論(「2010.07.22事実関係について」)もあるので、おそらく批判した作家が川上未映子さんと別の作家志望者とを混同しているのだろう、という結論に至りました。

批判したこの作家の振るまいから得た教訓はみっつ。
ひとつは、文壇にはつまらない人がいる、です。
才能ある若手に嫉妬して一方的に攻撃をしかける、という状景は今回に限ったことではありません。従って、今回見かけた個人ではなく、あくまで類型のひとつとして、つまらない人だ、と思うのです。
ふたつめは、私自身が批判する時の決まりごとをきちんと考えておこう、です。
批評とは、作品の好き嫌いを理由と共に述べること、だと思います。
嫉妬などの感情が動機として(判断の理由としてではなくではなく)紛れ込まないようにするには、感情に影響されない基準が“便利”かもしれません。
もうひとつは、自分を大した人物だと思わないこと。
若手に攻撃をしかける側の人に共通して、自分自身の評価が高すぎる、という印象があるのです。
あくまで一例として今回の例から引用してみると、「小説は文化であり、なべて文化は枯れやすい花である。命を削って、その花圃の番人の一人であり続けてきたという自負が、僕にはある。」・・・。
こういう表現を書いても客観的な違和感がないのは、文壇や流行とは距離を置きつつも読書人からの深い支持を集めているような人だけでしょう。そういう人はこんな言葉を書かないだろう、とも思いますが。
とにかく、そんなに大した人なのか、と感心しながら著作リストを見て、がっかりしなかったことはありません。

新人賞の審査を若手作家がやること、の一般論に話を戻します。
選定眼については問題にならないでしょう。
本格審査以前の「下読み」が無名アルバイターに任せられている、という噂もありますし、一般企業の採用面接を若手社員が担当する習慣もありますから。(つまり、ほとんどの落選者は、若手とすら言えないような人に落とされているのです。)
嫉妬などによって不当な判断を下す可能性はもちろんありますが、若手に限ったものではないでしょう。中堅・大御所の中にも、下らない人物はいます。
当たり前のことですが、要は、主催者がどんな文学賞を志しているのか、ということに尽きます。
仮に、若手だけで審査員を構成する文学賞があったとしても、好き嫌いはあっても善悪はありません。

ちなみに、新潮新人賞の審査員の場合、大御所と呼べるのは福田和也さんだけ。
存じ上げない方もいらっしゃいますが、審査員としての言葉を集めると、文学を手段として求道する人、という共通する印象が湧き上がってきます。
おそらく、一貫した思想のある良い文学賞なのだと思います。
川上未映子さんについても、その共通印象を乱していないので、良い人選だと思います。
2010-07-23 07:40  nice!(0)  コメント(4)  トラックバック(1)  共通テーマ: [時事]

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コメント 4

ホラー

びっくり、、、ホラやんか。ホットケーキ、ステおきなはれ。
by ホラー (2010-07-23 09:06) 

通りすがりですが

浅田彰に松浦理英子、町田康という顔ぶれから、
川上未映子、星野智幸、中村文則への変更のどこに一貫性があるのでしょうか?
歴代の選考委員と比べてみても、呆れ返るぐらい軽い面子なんですけど。

歴代の選考委員や主要な受賞者の著作を一通りでも読んでいれば、
新潮社が賞の方向性を変える為に、今までにない程の梃入れを図っている、ということぐらいは分かる筈だし、
その判断の是非は抜きにしても、
賞の共通印象を乱していない、一貫性のある人選だ、などとは絶対に言えないと思うのですが。

20年以上のキャリアを持つプロの作家の、
新人賞の選考という一般的とはいいがたい制度についての文章に対して、
どうしてこんな一般論の域を出ないような意見を(説教じみた語調で)書いて
無反省に満足げでいられるのか、よくわからない。
by 通りすがりですが (2010-07-24 16:26) 

plant

「通りすがりですが」さんのコメントについて
完全不特定の方がどうしてこんな過疎ブログに批判的なコメントを書いたのは分かりませんが、簡単に反論しておきます。

「一貫性」は、前回審査員からの一貫性ではなく、今回の面子の中の一貫性です。
しかも、あくまで“私の知る範囲での印象”を書いてあるだけなので、それとは異なる「通りすがり」さんの印象をぶつけられても、論点がなく不毛です。

「20年以上のキャリアを持つプロの作家」とは、たぶん津原泰水さんのことなんでしょう。
プロの文章・作品への感想をアマチュアの一般読者が述べるのは、ごく普通のことです。
しかも、文章の技術を批判しているのではなく、内容や、社会人としての振るまいについての意見ですから、プロとしての年数なんて関係ありません。

「一般論の域を出ない」・・・批判の決まり文句ですが、この場合は、一般論以外の何に価値があるというのでしょうか。
あえて繰り返すと、川上未映子さんは素晴らしい作家だと思うが、高く評価されている若手に公の場で言いがかりをつける中堅作家は社会人として下らないと思う、という個人的で具体的な感想こそを書いてしまっていますし。

語調については・・・語調だけで嫌いなブロガーさん、等が私にもあるので、仕方ないですね。
ただ、他人に説教している内容でないのは、確かです。
by plant (2010-07-26 13:41) 

plant

ホラーさんへ コメントありがとうございます。
あとはステおきます。
by plant (2010-07-26 13:50) 

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川上未映子さんに関して色々(モネラ 2010-07-27 18:00)

数年前に亡くなった池田晶子さんの名前を冠した賞の第1回受賞者として、私は知りました。 その前に芥川賞も受賞されています。

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