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『九年目の魔法』(ダイアナ=ウィン=ジョーンズ)

英国の妖精伝説などを下敷きにした、ちょっと(かなり)大人向けの児童文学。
10年以上前に読んだのが、初めて読んだジョーンズ作品だったかと思います。
原題は、『Fire&Hemlock』(1985年発表・『炎と毒人参』)。

象徴関係を現実的に解釈・整理すれば、大人の男性と10歳の少女との恋愛が9年後に成就する、という話です。
大人の男性にはおそらくは年上の妻がいて、2人の仲を邪魔し続けます。
そのため、少女は少なくとも一時は男性のことを忘れてしまいますが、あるきっかけによって思い出を取り戻し、年上の妻から男性を獲得する・・・。

もちろん、作品の表向きの展開は、もっと魔法に満ちています。

19歳のポーリィは、寝室にかけてあった「炎と毒人参」の写真を久しぶりに見て、もう一つの真実の記憶を失っていた事に気づきます。
ほとんどの記憶はすぐに戻りましたが、その記憶を失った時のことだけはなかなか思い出せません。

物語の始まりは、ポーリィが9歳の頃。
ある屋敷での葬儀に迷い込んだポーリィは、もう一人の主人公トーマス=リンと出会います。
その後、大人の「リンさん」は、なぜか子供のポーリィを大切な友人として扱い、一緒に英雄物語を作ったり人生の重大な判断を相談したりします。
もちろんポーリィにとっても、「リンさん」はかけがえのない友人となります。

2人の間に割り込んでくるのは、「リンさん」の前妻ローレルと、その現在の家族たち。
実は、ローレルは数々の伝説にも登場する“妖精の女王”で、「リンさん」はいけにえにされそうな時に偶然紛れ込んだポーリィによって救われていたのです。
ところが、ローレルたちの仕掛けた魔法の罠に落ちこんだポーリィは、「リンさん」が再び捕らわれる手助けをしてしまい、その時に記憶も失ってしまっていたのです。

作品の終盤で冒頭場面の続きに戻り、全ての記憶を取り戻した19歳のポーリィは、「リンさん」がプレゼントしてくれたたくさんの本を思い出しながら、「リンさん」を救い出す正しい魔法を考え始めますが・・・。

さて、こういった流れのメインプロット群の脇では、ポーリィと「リンさん」がそれぞれに抱えている問題が様々に語られます。
それらは、思いつきのサブプロットではなく、メインプロットとも類推的なつながりが見つけられそうなものばかりです。
ポーリィの家庭が崩壊してしまうことや、ローレルの義理の息子がポーリィに夢中になってしまうこと、「リンさん」が立ち上げた四重奏団の顛末など・・・。
魔法による世界の変化も関係しているので、とても複雑です。

最寄りの図書館では児童室に並んでいましたし、翻訳も児童文学向けの文体ですが、普通の中学生ではほとんど整理できない難解な作品だと思います。
そもそも主題が、男女関係の難しさ、だと思いますし。
私にとっても未だにすっきりしない部分や見過ごしていた伏線がたくさんありそうなので、近々にもう一度目を通してみようかとも思います。

なお、全体は4部構成で、それぞれに面白いアナグラムによる題がついています。
第1部:New Hero
第2部:Now Here
第3部:Where Now
第4部:Nowhere

「Nowhere」については、行き詰まりとしての「Nowhere」と出発点としての「Nowhere」の違いが語られていました。
もちろん、最後にポーリィとトーマスが立ったのは、後者です。


九年目の魔法 (創元推理文庫)

九年目の魔法 (創元推理文庫)

  • 作者: ダイアナ・ウィン ジョーンズ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1994/09
  • メディア: 文庫



2011-09-12 02:22  nice!(2)  コメント(1)  トラックバック(0)  [過去によんだ推奨本]

nice! 2

コメント 1

plant

あきえもんさん siroyagi2さん
Niceをありがとうございます。
by plant (2011-09-14 01:32) 

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