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『いまファンタジーにできること』(アーシュラ=ル=グウィン)

『ゲド戦記』作者の講演録集。


ファンタジーに関連した様々な意見が書いてありますが、ほとんどの内容に深くうなづかされます。
一例として、冒頭近くの一文を引用します。
ティーンエイジャーたちがトールキンのそれのような、本物のファンタジーを見つけてくれることを期待します。・・・(出版関係者たちが)本物のファンタジーにそれにふさわしい栄誉を与えてくれることを期待します。ファンタジーが単なる逃避や願望の充足に成り下がったり、空虚なヒロイズムや無思慮な暴力への耽溺に陥ったりすることがときにあるとしても、ファンタジーが定義からしてそういうものだというわけではないのです。

『指輪物語』のような作品(=本物のファンタジー)では複雑な道徳的命題が問われているのですが、ビジネスとして成功した作品の中には、単純で暴力的な「善と悪の戦い」に終始しているものも多いですから、“人気”や“興行成績”とは異なる評価も重要なのです。

また、その評価の軸について十分に考えれば、前記事で採り上げた『小説の読み方の教科書』(記事)の主張の不十分さも分かります。
“ありのままを受け入れる”という姿勢だけでは、大切な問答を伴う「トータルな体験」ができるとは限りません。
作品が単純であれば、どうやっても単純な体験しかできないのです。
「正しい読み方」のためには、何らかの道徳的思考が役に立つことも多いのではないでしょうか。

ともかく、本書には、本物のファンタジーを数多く書かれた作者の様々な論考がおさめられています。
読書や批評のために、大いに参考になります。


いまファンタジーにできること

いまファンタジーにできること

  • 作者: アーシュラ・K・ル=グウィン
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2011/08/20
  • メディア: 単行本


2012-02-20 01:45  nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0)  共通テーマ: [最近読んだ本]

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