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『趣味は読書。』(斎藤美奈子)

色々とひねったつもりの、ベストセラー書評。

書評本文は、意外にに普通の辛口批評です。
「書評」と言っていいのかな、と思う部分もあります。
何となくですが、読む前にどんな書評を書くのかをある程度決めているような気がするからです。
批評文があまりにも流暢で、実際に読んだ際に感じた“ひっかかり”から考えを拡げた跡がよく分からないのです。
そういう意味では、同傾向の作品を集めた各章の標題を並べるだけで、この本の内容の半分くらいは読んだ気になります。

例えば、
・読書の王道は現代の古老が語る「ありがたい人生訓」である
・究極の癒し本は「寂しいお父さん」に効く物語だった
・ものすごく売れる本はゆるい、明るい、衛生無害
・・・等です。

どんな作品が選ばれているのかも、大体分かりそうですね。
答えの例:
・『老いてこそ人生』(石原慎太郎)
・『白い犬とワルツを』
・『世界がもし100人の村だったら』



最も面白く、はっとする部分があったのは、まえがき部分です。
いくつかの数字を挙げて、読書人口の実態を指摘しています。
そもそもベストセラー読者を含めても読書をする人はごく一部の人間である、とか、その中でもさらにごく一部に過ぎない「読書依存症」の人だけが、例えば、良書が売れない世の中について憤慨しているとか・・・。
私も「読書依存症」の一員だと自覚しているので、その人たちにありがちな考え方への批判には、多少の反省を促されました。

はたして彼ら(ベストセラー読者:引用者注)は「愚かな大衆」だろうか。・・・「本を読む人」が少数民族である以上、「善良な読者」も自他ともに認める有力な読書人の一派である。・・・もしも彼らがいなかったら、社会はそれこそ「本を読まない大衆」と「本しか読まない知識人」に二分化されてしまうだろう。・・・


・・・等と書きつつ、本文では、「善良な読者」に本を買わせるベストセラー製造法の指摘が主な内容のひとつになっているのですが・・・。
著者の視点も混乱しているようです。



本文で、痛快だった部分をひとつだけ。
『鉄道員』(浅田次郎)への批判には、無批判に感動している「善良な読者」が多いだけに、すっきりしました。
最初に書いた「どんな書評を書くのかをある程度決めている」という印象もなく、読んだ時の驚きとその後の気づきを素直に書いているように思います。

・・・『鉄道員』は「牡丹灯籠」もかくやの怪談なのだ。・・・ これぞ恐怖の浅田マジック。・・・俗情をくすぐる演出が。・・・ でも、でもですよ。幽霊が育っていくっていうもの不気味。それを怪談だとだれも認識せずにいるのも不気味。・・・日本中が娘の幽霊に心を洗われてさめざめと涙を流すの図。それが一番の怪談である。





趣味は読書。 (ちくま文庫)

趣味は読書。 (ちくま文庫)



2013-06-25 10:13  nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0)  共通テーマ: [最近読んだ本]

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